おばちゃんの「いい加減にしなさい!」
今日は夜勤。
ちょっと憂鬱。
でも夜勤は好きなほうだ。
日勤は嫌いだ。
騒がしいから。
リーダーなんかしていると体がいくつあっても足らないくらい忙しい。
でも夜勤は急変があったりするのは怖いが比較的マイペースで仕事ができるから嫌いではない。
ところで隔離の躁状態の患者は少しは落ち着いてくれているだろうか?一昨日の日勤では5分おきにコールを鳴らしていたな。行っても特に用事がない…でも行かなければならない。正直、一人の患者だけをみているわけではない。コールがなってもジャストなタイミングでは訪室できないのが現状。でも少しでも遅れると怒鳴り散らしてくる。
「俺はお客様だぞ!」と……
たしかに患者さんはお金を払っており医療サービスを受ける権利がある。我々医療従事者はそれにこたえなければならない。
精神科の患者さんはさまざまな経緯で入院してくる。自身で異変に気づき、受診し自身の同意のもと入院になる場合いわゆる任意入院ってやつと、全く病識がなく外で法律すれすれのことをしてしまい(時には法に触れてしまうことも)警察に保護されて、入院してくるケース。などさまざまである。
法律すれすれのことをしても入院するとその瞬間お客様になってしまう。病気であるため仕方がない、それを治療しに来ているのだから…
しかしその症状によって外で被害を受けてしまった方もいる…そんなことを考えると大声で「俺は客だ金を払ってるんだぞ!」と言われても納得できない時がある。
もうかれこれ長く精神科に勤務しているが、腑に落ちないことだらけだ。
自分の人間力が足らないのか?器がないのか?
実は精神科に向いていないのか??
最近は接遇をより厳しく問われる時代。患者さんへの対応も厳しくチェックされる。
サービス業なら当たり前のことである。いくら患者さんに暴言を吐かれても冷静に毅然に接しなければならない。
精神科も昔よりはだいぶメジャーな時代になってきて、卒後1年目の看護師が精神科に入職してくるようになってきた。非常に喜ばしい傾向であると思う。そして新人研修など充実させている病院も多い。病棟にフレッシュな若い新人看護師が看護技術を身に着けようと奮闘している姿はとても微笑ましい。そして患者さんへの接遇も実習のように丁寧で長年勤めている僕たちを初心に立ち戻らせてくれる。とてもいいことだ。
しかしいざ不穏状態な患者さんへの対応となると手も足も出ない。時には揚げ足を取られたりしてしまうこともたびたびある。こういった時の対応って教科書にはない。
精神科の難しいところである。
ひと昔前の精神科は違っていた。卒後1年目の看護師などほぼいない。他科で経験し熟練した看護師が多く、そしてだいたい各病棟に年配のおばちゃん看護師がゴロゴロいた。その中でもお局的なタイプのおばちゃん看護師がいる。
そして患者さんがわがままを言ったり理不尽なことを言ったりすると、そのおばちゃん看護師が厳しく怒っていた。「いい加減にしなさい!」と。
今の時代たぶんアウトだろうな…そしてスマートフォンなどインターネットで情報が流出する時代。すぐマスコミなどに流れて大問題になってしまうだろう。
でも僕は看護の世界、特に精神科ではこのようなおばちゃんは絶対必要だと思う。
おばちゃんの 「いい加減にしなさい!」
これは理屈抜きで効くように思う。
怒るというよりも叱ると表現したほうが伝わりやすいかな。
これは若者には無理なこと。人情に厚く経験豊富な人間でしかできない技。
今精神科ではこの技が消えつつあるように思う。確かに接遇は大事。そこを意識しなくなれば本当に痛ましい事件が起きてしまう。サービス業である以上サービス精神は常に持っておかなくてはならない。
でも消えていくのは何か淋しい気がする。
消えつつあるのなら自分がしていくべきか?僕もそろそろ40歳を超えおっちゃんの領域である。この技を自分が実践して若者に教えるべきなのか?
いや、それもなんか違う気がする。
もうそんな時代ではない気がする。でもこのおばちゃんの「いい加減にしなさい」が時と場合とタイミングによって絶大な効果、威力を発揮するというのはぜひ覚えておいてほしいと思う。
今消えつつあるおばちゃんの「いい加減にしなさい」
なにか今風に形を変えて残っていかないものか…